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お題「同性愛」「宣戦布告」「花瓶」

お題「同性愛」「宣戦布告」「花瓶
今回のは、書いていた楽しかった。
もっと書きたいとか思いつつ、制限時間が50分だから
仕方なく打ち切り。
これも個人的にはそれなりにお気に入りな話になった。


 夏が駆け足に走り去り秋が顔を見せつつある九月も中旬。
私は、人気のない銀杏(いちょう)並木(なみき)を一人でゆっくりと歩いていた。
いつもならば、まばらにも人通りの多い銀杏並木だが事、この季節には殆ど人通りは、皆無といえよう、なぜならばそろそろ銀杏(ぎんなん)が香る季節だからだ。
私、周防鏡花が通う学校は、女子高でありお嬢様が多い事で有名なエスカレーター式高校である、好き好んで銀杏並木を徒歩で学校まで通うような生徒は殆どいない。
それでなくても生徒の三割程は、親の送迎での登下校だ。
早くこの銀杏並木を抜けてしまおうと歩を進めるスピードを早めると、黒塗りのいかにもな車が私のすぐ横を通過してそこで停まった。
「お姉さま~」
人懐っこい声で声をかけてくるのは、常磐夢子(ときわゆめこ)、中等部の三年で、初等部・中等部・高等部は部活動は共通になっている。
自動的に初等部の面倒を中等部が中等部の面倒を高等部が見るようになっている、夢子もそういう過程で文芸部で知り合った後輩である。
「おはよう、そのお姉さまって言うのやめない?百合っていうか同性愛みたいで気になるわ」
「私(わたくし)は、お姉さまとなら構いませんわ」
私が構います。このお嬢様は本当に自由気まま、話してると悩みなんて飛んでいくからいいのだけど、たまにすごく疲れる。
「それよりお姉さま、お車で学校までどうですか?」
「いえ、おかまいなく、銀杏並木もいいものですよ、このように五感で秋の訪れを感じるのもなかなかですよ、それに創作意欲も湧きます」
あぁ私のバカ、思ってもないことを、お姉さまなんて言われてるせいで変な意地を張ってしまった。
「なるほど~そういうことでしたら、私もご一緒してもよろしいですか?」
「えぇ、構いませんわ」
笑顔を意識してみたものの多分、私の笑顔は引きつっていたに違いない、
誰が好き好んで銀杏並木を歩きますか、銀杏を拾ったりしているのも爺婆ぐらいで私ぐらいの若者がそんなことしてたら怪しいことこの上ない。
「それでは、お父様、行ってまいりますわ」
そうして黒塗りの車の運転席の方へぺこりと折り目正しくお辞儀をするとぱたぱたと私の横へ並んで銀杏並木を歩き始めた。

 教室へ着くと何やら教室が騒がしかった。
窓際の一番うしろで窓の外を頬杖をしながら、眺めて、耳だけを教室の話題に向けてみると、何やら物騒なワードが飛び交っていた。
誰々が誰々に宣戦布告をしただの、戦争が始まるだの、言葉だけ聞いていれば国の外の話のようだ、だけどこれは学校内で起こっていること。
この学校は色々な派閥が存在する。たいていがろくでもない理由と目的な派閥。
そして派閥と派閥は仲があまりよくないらしく定期的にこんな話が出てくる。
殆どの生徒には関係のない話だけど、だからこの女子というのは噂好きなのである。
噂には尾びれ背びれがついてそこまで大きな話ではないと結論。
 小さく嘆息すると、先生がやってきたので噂話をしていた生徒たちもみんな席につく。

 そう今朝の段階では、噂が大きくなっただけの話だと思っていた。

 授業も終わり、今では部室棟になっている旧校舎二階の一番奥の部屋、文芸部の部室へやってくると、いつもは明るい笑顔を絶やさない夢子が陰鬱な表情で俯いていた。
夢子の顔を覗き込みながら、
「夢子?どうしたの?大丈夫?」
今気がついたというようにはっとした表情になり、
「お姉さま、何でもないですよ?大丈夫です、私は元気ですよ」
といつもの満面の笑顔をしてみせた。だけど大丈夫な人間はそんな改めて元気です。なんて事は言わない。
私は肩をすくめてわざとらしく溜息をつくと。
「本当は?」
慌てたように、手をぱたぱたと振りながら、
「本当に本当です、あいけない、花瓶の水を変えないと、ちょっと行ってきますねー」
そういうと大慌てで花瓶を持って声を駆ける間もなく走っていってしまった。
あからさまに取り繕っている。そもそもめんどくさいからという理由から文芸部の花は原稿用紙で作った造花である。
水を変える必要なんて勿論ない。
でも夢子が話さないって事は無理に聞き出すのも恐らく無理かな、あの子は昔からそういう子だ、初等部の頃に男にからかわれていた時も私の前はいつも笑顔で決して辛そうな表情なんて見せなかった。結局それを知ったのは全てが終わった後になっての事だった。泣きながら告白してくれた事も今でも鮮明に覚えている。
変な所であの子は頑ななのだ、だったらあの子がまた話してくれるまで黙って気がついていないフリをしていよう。
それで全て終わったらスイーツ食べ放題をおごらせてやろう。
これは決定事項。
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Theme: 三題噺 | Genre: 小説・文学
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